元トヨタエンジニア制作のからくり人形、ロシアへ
糸やぜんまいなどで動き、江戸時代に盛んに作られたからくり人形に魅せられ、人形作家になった元トヨタマンのエンジニア山崎津義さん。10月25~31日にロシア・モスクワである国際人形劇フェスティバルで、初めて海外公演をする。名古屋市などに住むからくり人形の仲間2人とともに、山崎さんが作った「茶運び」や「流鏑馬(やぶさめ)」、「文字書き」などのからくり人形五つを披露する。
山崎さんはかつて、トヨタ自動車でエンジンの開発を担当するエンジニアだった。働き盛りの30代半ばごろ、「会社で働くだけの人生でいいのか。幅を広げたい」と、ふと思い、仕事以外にも熱中できることを探した。最初はアーチェリー。その次は室内模型飛行機作り。模型飛行機作りでは世界大会に出場し、10位になったこともある。1995年には職場の仲間とともに、手作り飛行機で飛行距離を競う「鳥人間コンテスト」に参加し、2位になった。
からくり人形に出会ったのは、トヨタを定年退職する2年前の98年。テレビで見た人形の動きに興味を持ち、からくり人形師の9代玉屋庄兵衛氏から基本を習った。これまでに制作したのは25体。今回のモスクワ公演で披露する人形には、思い入れの強い作品が含まれている。
2006年に完成した「文字書き」は、筆を持った人形が「松」「梅」「寿」の3文字を書く。箱の中にある「カム」という円板状の部品に凹凸をつけ、前後や左右、上下の筆の動きを制御する。思ったような文字になるのに、約700回の試し書きが必要で、完成までに1年かかった。
「流鏑馬」は馬に乗った織田信長の人形が左から右に走り、矢で的を落としていく。弓の動きを工夫する際、アーチェリーの経験が役立った。この作品で、05年の愛知万博であった「世界からくりコンテスト」のグランプリに輝いた。